2019/06/12
中耕除草機(ラチウチキ・コロガシ)
田植え後の、根に酸素を補給する中耕と除草のため、一日中田んぼの中でうつむいて泥をかく「田の草取り」や、鍬(くわ)での「ラチウチ」作業は、過酷な重労働であった。
この重労働の軽減に役立ったのが回転式の中耕除草機の普及であった。
田植えに回転定規が使われるようになり、正条植えが普及した大正年間から昭和45年頃まで、さまざまな形式のものが使われた。
砺波正倉より
中耕除草機(ラチウチキ・コロガシ)
水管理と雑草
現在の米作りでは、田植えと同時に除草剤を散布していて、雑草の抑制がされている。10日間(活着期)は、田んぼに水を切らさずに出来れば雑草は抑えられると言われるが、なかなか水を切らさずに雑草を抑制させるのは、日々の日常管理が大事。
さらに、常に田んぼが水平ならよいが、年月とともに、1枚の田んぼでも高低差がついてしまい、水管理が難しくなる。
田植え後10日から25日までは、浅水で管理され、その後田んぼの水を切る中干し作業となる。
浅水での管理が完璧でないと、雑草が生える。
水管理が適切でなく、苗の間にすでに雑草(粟・稗)が顔を出した状態
雑草と除草の現実
今の慣行農法でのコメ作りでは、田植えと同時の除草剤散布が行われている。
粟稗などの雑草が生えてきた場合、その都度除草剤を追加して散布して雑草を抑える対策を取られている圃場もあるが、大規模な圃場を管理する営農組織では、そのまま放置された田んぼも少なくない。なぜなら、個人農家から営農組織に切り替えた場合、少人数で圃場管理をしなければならなく、10~30haで1人専従となると、除草作業まで手が回らない現実がある。
除草作業を適切に行わなければ、年々雑草は増えてきて、雑草を根絶するために、転作をするなどをして雑草をなくす対策が行わている場合もある。
稲刈り時期に稗だらけの田んぼ(街中の某営農組織の圃場)
脇之谷内でも、営農組織であるが、営利目的ではなく、機械の共同出資、機械の共有のための営農組織であり、水や畔管理は、これまでと同様個人個人の農家が管理しているために、丁寧な米作りが行われている。
また、8月頃になると、家々では、早朝4時半頃から雑草取りのために田んぼに入って、6時頃終了、そのまま出勤している兼業農家さんも少なくはない。すべてを任せる営農組織と違って、個々の管理が中心となっている営農組合脇之谷内では、皆が同じように高い意識をもって田んぼの管理がなされている。
稗取り作業体験を行った参加者
農作業と子供の教育・今昔
自然栽培では、田植え後4~5日でチェーン除草などを4~5回程度行われている。ぬかるんだ田んぼで10kg以上あるチェーンを引っ張って雑草を除去するチェーン除草は、半端なく重労働である。
私自身昨年から、中耕除草機を使っての雑草対策に取り組んでる。
中耕除草機のことを、この地域の人たちは、ラチウチと呼んでいる。
ばあちゃんたちも、除草剤が無い若い世代の頃に、この中耕除草機を使っていたらしく、懐かしがっていた。
また、50~60代のおっちゃんたちも、とおりすがりに
「珍しいもの 使っているな」と声をかけてくれ、
その後に出てくるのが、
「俺たちが、学生の頃の日課だった。これがつらくて嫌だった」とぼやいていた。
そう考えると、今の世の中、子どもたちに楽しい農業体験をさせるが、辛い農作業はさせていない。
昔の人たちは、辛抱強さは、こういった日々の家の手伝いで養われてきた。また、辛抱強さだけでなく、中耕除草機を使うと、様々なことが養われる。
- 体幹も足腰も鍛えられる(体力UP)。
- 機械を動かす時に、何も考えていないと泥が機械にのしかかると前に進まなくなるので、微妙なコントロールが必要で、頭をフル活用しながら、全身と脳の運動・連携にもつながる。
- 田んぼの中の稲の1本1本の様子、カエルやタニシ、タガメなど生物多様性を真近に見れて理科の学びがある。
- 田んぼ1枚1枚、粘土質の圃場や砂地の圃場での違いを体感出来、地理の特性、地質学の基礎を体感。
以上のように、辛い農作業でも、米が出来上がる収穫までの工程を見ることが出来るため、辛抱強さと達成感のある楽しさを体感できる。
しかし、現在の子供たちには、辛抱強さ・耐えることのあとにある達成感の楽しさを大人たちが伝えようとしていない場合も少なくない。とことん、塾や稽古事をやっていれば別だが、塾も稽古事も中途半端なままだと、何に対しても辛抱強さが備わることが難しくなり、長続きしない大人へと成長してしまっていると、年配者は、今の若者たちの行動を危惧している。
私自身も年配者が危惧することと同様に感じるのが、若者と年配者の楽しさの定義が違うと感じている。
今の若者たちの楽しさ=打ち上げ花火のような一発もので継続性がなく、継続する前に本人たちが飽きている
年配者の楽しさ=日々の淡々と地道な工程の中から、時には辛いこともあるけど最後には成果が出て、達成感がある。毎回とっかかりは、嫌だ嫌だと口にしながら、他の人たちと共同作業で継続的に体が続けている。
評論家や成功者が、何事にも楽しいことをしなければ、続かないというが、
私自身は、どんなことでも楽しく出来るように切り替える、思考を持つことも大事だと思う。
そう、私自身も作業中おっちゃんに、
「お前、楽しそうにやっているな」と褒められた。
中耕除草機を懐かしがって見学に来ている近所のばあちゃん
見ている婆ちゃん達も懐かしいのと珍しいので、楽しそう
本blog・NOMACHIでは、ライトな農作業のお手伝いから、このようなガチな農作業体験まであります。
打ち上げ花火のような楽しさから、地道な作業を続けながらの達成感のある楽しさづくりに興味ある方は、是非ご連絡ください。
365日、農作業での体感・体験いつでも受け付けています。
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